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駐在員の“長時間労働”に目を向ける

※以下は 2025 年 6 月開催のセミナー内容を整理したものです。社内外の状況や法改正は随時アップデートされる可能性がありますので、最新情報とあわせてご活用ください。

2025年6月のセミナーは、「海外勤務者の長時間労働」をテーマに海外勤務者の労働実態について取り上げました。
実は、日本では少しずつ改善の兆しが見える長時間労働ですが、海外では長時間労働の実態が多いという、現状が浮かび上がってきました。

「週60時間以上勤務」海外では日本の2倍に

総務省や労働政策研究・研修機構の調査によると、週60時間以上働いている人の割合は、日本国内では約8%ですが、海外勤務者では20%に達することがわかりました。特に、20〜40代の若手から中堅層にその傾向が顕著です。
週60時間以上というのは、月換算で240時間を超え、日本国内でいわゆる「過労死ライン」を超える水準にあたります。

この背景には、海外ならではの事情が関係していると考えられます。

たとえば、

  • 休日に来訪者のアテンドをしなければならない
  • 拠点に日本人が1名しかおらず、すべての業務を担当しなければならない
  • 日本との時差があるため、早朝や深夜の会議に対応しなければならない

このように、海外では“見えにくい長時間労働”が発生しやすい構造があるのです。

日本の法改正から見える「企業の責任範囲の変化」

2019年の労働安全衛生法改正以降、時間管理の目的は、単なる賃金の計算だけでなく「社員の健康の確保」も加わりました。
さらに、管理職も時間管理の対象となり、健康への配慮がこれまで以上に求められるようになっています。

駐在員が現地法人と雇用契約を締結し、指揮命令系統が現地企業に属していたとしても、日本法人との間に雇用関係が維持されている場合には、日本法人側にも一定の安全配慮義務が生じる可能性があります。

この点については、2007年施行の「法の適用に関する通則法」に基づき、労働者に損害(例:長時間労働による健康障害など)が生じた場合に、日本の民法および労働契約法に準拠して、日本国内で損害賠償請求が行われる可能性があることが示唆されています。
このように、社員の健康確保は日本国内にとどまらず、海外赴任者にも及んでいるのです。

日本企業がとれる4つの対策例

では、出向元である日本企業は、具体的に何ができるのでしょうか?

今回のセミナーでは、以下の4つを実践策の例として提案しました。

  1. 出向契約に、健康管理と労働時間の取り決めを明記する
  2. 勤怠データの定期共有(月次報告など)を行える仕組みを整える
  3. 健康診断・ストレスチェック・産業医の面談などを活用する
  4. 社員本人への定期的に健康配慮を目的とするヒアリングを行う

特に、社員本人へのヒアリングは、「評価」や「人事指示」と混同されないよう、「安全・健康のため」に限定していることを文書などで明確にしておくことがポイントです。
出向元が注意すべき点として、「指揮命令系統が二重である」と見なされることで、税務上の取り扱いリスクや、現地の管理者やスタッフとの信頼関係を損なうリスクがあります。
そのため、医療職(産業医・看護職等)が間に入るなど、健康管理が主たる目的であることを明示する工夫が必要です。

健康と働きがいを支えるグローバルな組織へ

海外駐在員の長時間労働は、もはや「現地任せ」や「自己責任」では片付けにくいテーマになってきています。
出向元の日本法人側としても、無理のない範囲で“健康と働きがい”を支える工夫を重ねていくことが、結果として組織全体の安心感や信頼につながっていき、これからのグローバル社会で選ばれ企業になっていくと良いですね。

なお、本セミナーの資料は下記リンクよりダウンロードいただけます。ご活用いただければ幸いです。

資料ダウンロードリンク:https://x.gd/JVYnE

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