インドネシア駐在者の健康管理:食あたり・腹痛対策の一例「Mylanta Sirup」
はじめにー“小さな不調”が現場を止めないために
海外駐在者を預かる人事のみなさんは、労務・安全衛生・現地制度と、広い守備範囲を一手に担っています。なかでも東南アジアでは、食あたり・胃腸不調により、赴任者のパフォーマンスを直撃しがち。現地で入手しやすい市販薬やセルフケアの一般情報を、赴任前研修や安全衛生活動の“参考資料”として共有しておくと、いざというときの初動がスムーズになります。
本連載では、そんな人事担当者の方々が赴任前研修や安全衛生活動にすぐ活用できるよう、薬剤師監修のもとで世界各地の市販薬をピックアップ。現地のドラッグストアで処方箋なしに入手できる市販薬を例に、具体的かつ実践的な情報をお届けしています。
今回は、インドネシアで市販されている胃腸薬「Mylanta Sirup」をご紹介。日本と異なる水の性質、食文化の中で体調を保つためにも一度チェックしていただきたい製品です。
※本記事は一般情報の提供を目的としており、医療行為、服薬指導、医薬品推奨を行うものではありません。服用判断は必ず現地の薬剤師・医師へご相談ください。
■なぜインドネシアで胃腸トラブルが起きやすい?
長期の駐在者や出張者がインドネシアに滞在すると、胃や腸に関連するトラブルに見舞われるケースが散見されます。これらのトラブルの主な原因を押さえることにより、予防につながります。東南アジア諸国でよく見られる問題で他の国にも当てはまることでもあるので、念頭に置いておくことが望まれます。
- 水や氷、屋台飯など衛生環境の違い
- 辛味・油分の多い料理、会食続きによる消化器への負担
- 長時間移動、暑熱、ストレスで胃酸が増えることによる胃への負担
まずは補水・安静が基本ですが、胃酸過多・ガスだまりが主体の“キリキリ・ムカムカ・張り”には、制酸+消泡の組み合わせが役立つ場面があります。

■製品概要:Mylanta Sirup(ミランタ シロップ)
有効成分(5mL中)
- 水酸化アルミニウム 200 mg(胃酸を中和)
- 水酸化マグネシウム 200 mg(胃酸を中和)
- ジメチコン 20 mg(=消泡剤。腸内ガスによる張り・鳴りの軽減に用いられる)
一般的な効能
胃酸過多・胃炎・胃潰瘍・十二指腸潰瘍に伴う腹痛、胸やけ、胃の不快感の軽減
用法・用量
- 成人:5〜10mL を 1日3〜4回
- 小児(6–12歳):2.5〜5mL を 1日3〜4回
※食前1時間または食後2時間・就寝前。付属の計量スプーン使用。
服用時のポイント
| 服用間隔 | 本剤は他の内服薬の吸収を妨げることがあります。 1〜2時間以上間隔を空けて服用。 |
| 副作用 | アルミニウム(Al)成分で便秘、マグネシウム(Mg)成分で下痢が出ることあり。 まれにガス関連の不快感。依存性なし。 |
| 禁忌・注意 | 重度腎不全、アルミニウム・マグネシウム制限中は使用を避ける。 6歳未満は医師に相談。 |
| 保管 | 30℃以下。高温・直射日光・多湿を避ける。 |
■ 日本の類似製品との違い(位置づけの目安)
- ガス対策成分:日本の「ガスピタン」はジメチコンの含有量が合計180mgとMylantaより多めで、ガスだまりが主症状の場合に向くことがあります。
- 制酸成分:日本の「パンシロン01プラス」は、アルミニウム・マグネシウム系制酸成分を含むが、総量はMylantaより少なめの設計。
- Mylanta Sirupは制酸(Al/Mg)+消泡(ジメチコン)を同時に摂れる“シロップ型”。固形剤が飲みにくい時や食後のムカムカ+張りが併発する場合に服用しやすいのが特徴です。
※製品選択・使用可否は現地の医師・薬剤師に相談のうえで。
■お薬以外のセルフケア
お薬を服用する以外にも、以下のような対策も検討してみてはいかがでしょうか。お薬と併用してリカバリーを促進できるかもしれません。
- 水分補給:発汗や下痢・嘔吐がある時は経口補水液やスポーツドリンクを少量ずつ。
- 食事:脂っこい/辛い物、アルコールは控え、消化にやさしいおかゆやバナナ等へ。
- 休養:暑熱を避け、睡眠を確保。

■ 人事担当の皆さまへ ― 情報提供は“推奨”ではなく“選択肢の紹介”を
つい赴任者のことを思って、個別具体的な治療や製品を勧めてしまいますが、以下のポイントに留意して情報提供を行うことが必要です。
- 赴任前ガイダンスや安全衛生活動で、現地で入手しやすい市販薬の一般的な特徴(例:制酸+消泡の組み合わせ、服用間隔、他薬との間隔を空ける必要がある 等)や受診の目安を参考情報として共有しておくと、駐在員の初動判断に役立ちます。
- 特定製品の使用を義務づけたり推奨したりはしないこと、最終判断は医療専門職に相談することを明確に伝えましょう。
- 併せて、衛生対策(飲料水・氷・生野菜)や補水法など、非薬物の対策も周知しておくと実効性が上がります。
Mylanta Sirupは、インドネシアで広く流通するシロップ型の制酸+消泡に対応するお薬の一例です。原因そのものを治すお薬ではありませんが、食あたり後の胃のムカムカやお腹の張りなどの不快感を一時的に和らげます。
一方で、他薬の吸収を妨げるなどの注意点もあるため、服用間隔や禁忌を事前に把握し、迷ったら薬剤師・医師に相談する運用が安心です。
■ 出典・参考情報
■ 次回予告:各国の鎮痛剤や胃腸薬などもご紹介予定
各国で使用ケースが多くなりがちな「胃薬」「市販鎮痛薬」「整腸剤」に続き、第9回以降はカンボジアや南アフリカでの身近な対策薬をご紹介予定です。
SaveExpatsは、企業人事と海外赴任者をつなぐヘルスサポート情報をお届けします。どうぞお気軽にお問合せ・ご相談くださいませ。
※免責事項:
- 情報提供の目的と対象者:インドネシアに在住または赴任されている日本人の方々への一般的な情報提供のみを目的として作成されています。
- 日本国内未承認の医薬品について:本記事で紹介されている医薬品は、特定の国・地域において承認・市販されているものですが、日本の医薬品医療機器等法(薬機法)に基づく承認を得ておらず、日本国内では販売されておりません。 したがって、本記事はこれらの医薬品の日本国内での使用や個人輸入等を推奨、斡旋、または広告するものでは一
- 医学的助言の否定:本記事で提供される情報は、いかなる医学的、診断的、または治療的な助言を構成するものではありません。医師、薬剤師、その他の資格を有する医療専門家による個別の助言に代わるものとして利用されるべきではありません。健康上の問題や医薬品の使用に関する疑問については、必ず医療専門家にご相談ください。
- 専門家への相談義務:いかなる医薬品(市販薬を含む)であっても、その使用を検討する前、または使用する前には、ご自身の健康状態、アレルギー歴、現在服用中の他の医薬品との相互作用などを考慮し、必ず現在お住まいの国・地域の医師または薬剤師にご相談の上、その指示に従ってください。
- 現地法規の遵守と確認:医薬品に関する規制、承認状況、入手可能性、製品の成分・名称・パッケージ等は、国や地域によって大きく異なります。利用者は、ご自身の責任において、医薬品の購入・使用に関する現地の最新情報を確認し、居住国の法律・規制を遵守する必要があります。 当社は、本記事の情報が利用者の居住国の法規に適合することを保証するものではありません。
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