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海外人事実務のポイント④「厚生制度」【明日から役に立つ!海外人事のヒント#8】

みなさんこんにちは。SaveExpats広報です。

SaveExpatsは、海外駐在員が安心して現地で活躍できる環境づくりを目指して活動しています。このコラムでは、駐在員を支える海外人事の皆様に向けて、日々の業務に役立つ情報をお届けしています。

さて、今回の実務ポイント4回目は「厚生制度」です。

前回は、実務のポイント第3回目として「駐在員給与の考え方と制度設計」についてお話ししました。今回の「厚生制度」は駐在員本人だけでなく、その家族の生活設計にも深く関わる重要な仕組みです。どのような制度が導入され、どのように整理すればよいのか、一緒に見ていきましょう。

厚生制度とは

厚生制度の定義は会社によってさまざまですが、一般的には次のように定義されることが多いようです。

「社員とその家族に提供する報酬のうち、給与や賞与などの労働の対価として支給される以外のもの」

具体的には以下のようなものが一般的に考えられます。

  • 食事:社員食堂、食事補助
  • キャリア支援:自己啓発援助、退職準備プログラム
  • 健康管理:健康管理施設、診療所、生活習慣病対策、メンタルヘルス対策
  • 住宅:社宅、独身寮、住宅補助、住宅資金貸付
  • 財産形成:社内預金、財形貯蓄、従業員持株会
  • 生活支援:互助会、団体保険、一般貸付、各種見舞金
  • その他:社内イベント、職場レク補助、カフェテリアプラン
    (社会保険など法定福利は除いています)

駐在員を派遣する規模の会社には、上記のほかにも手厚い制度がたくさん存在します。これらは、社員が安心して生活できる環境や、リフレッシュする機会などを提供して、仕事に集中してもらうことを目的に提供されます。

これら厚生制度は、給与や賞与などの報酬と異なり、役職や成果、貢献度などに関係なく、「平等性」に重きを置き、一律に提供することが原則です。しかし、駐在員に対しては、さまざまな理由で適用できないものがあります。

第1には、制度そのものが法律によって規定されていて、日本国内に住んでいない駐在員については、対象外とされている制度です。財形貯蓄などがあげられます。

第2に海外に勤務しているということで、物理的に提供を受けられない、という制度があります。国内にある健康管理施設、診療所の利用や社内イベントへの参加、カフェテリアプランの一部などがあげられます。これらの中には独身寮に代わる社宅や社員食堂に代わる食事提供などのように、代替する制度を現地で提供されるものも存在します。

また最近では、ICT技術の発達により、Web利用により海外でも提供を受けられるようになってきたものもあります。自己啓発援助、退職準備プログラム、生活習慣病対策やメンタルヘルス対策などです。

制度整理の方法・ステップ

厚生制度は制度ごとに主管部門や担当者が異なっているケースが多く、すべてを網羅している部門や資料が存在するケースはまれです。したがって駐在員の窓口となっている海外人事部門は、これら制度について包括的に情報を整理する必要があります。駐在員から問い合わせを受けたときに「担当部門に確認しますので、少々お待ちください」では、信頼を得ることは難しくなります。

それではどんなステップで情報を整理していくのが効率的なのでしょうか。

まず各制度について、内容をしっかりと把握するための知識習得からスタートです。社内外のベンダーや担当部門から規程やリーフレット、運営マニュアルなどを収集して勉強しながら整理していきます。

つぎにそれら制度について、駐在員に関する適用可否を確認します。財形貯蓄のように条件を満たすことで帰国後にメリットを継続できるものなどもあります。これで駐在員に関する厚生制度の適用一覧表が完成します

さらに適用可否を確認する際には、どのような理由で適用できないのかもあわせて確認しましょう。前述のように法律で決まっているのか、それとも何らかの理由で意思決定がなされたのか、という点は重要です。社内ルールであれば、適用可否判断の背景や考え方なども把握しておけば完璧です。

駐在員取扱いの最適化に向けて

駐在員にも適用される制度の場合、あわせて日本ならびに駐在先国における課税に関する情報も整理しておきたいものです。厚生制度は経済的メリットを提供することが基本です。その経済的メリットが所得としてみなされるかどうか、また日本の所得税法における非居住者に対する課税はどのようになっているか、などは重要なポイントです。

一方で適用されない制度の場合、駐在先で代替制度として提供されているものはないかを確認することも忘れないようにしましょう。代替制度が導入可能にも関わらず行われていない場合には、現地法人に働きかける検討をしたいものです。そうすることで、駐在先間の公平性が担保されることになります。

厚生制度は、主管部門がバラバラなことや導入時に国内勤務者のみを想定して導入してしまい、駐在員への適用可否の検討がしっかりとなされていないケースはよくあることです。ここまで整理したところで、駐在員に適用していることが問題として把握できることも出てくるでしょう。制度整理を行うことでコンプライアンス問題が顕在化する前に主管部門などと連携して改善していくことができます。

駐在員生活のコンサルタントへ

これら厚生制度は、駐在員本人はもとより、単身、帯同に関わらず家族の生活設計にも大きな影響を与えるものです。駐在期間中も家族全員が安心して生活できることで、駐在員は難易度の高いミッションと向き合うことが可能となります。

海外人事のみなさんは、そのような駐在員をサポートできる社内の唯一無二の存在なのです。駐在員やご家族の立場に立って生活全般のコンサルタントとしてアドバイスができるようになることを目指していきましょう。

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